ダイムラーは、メルセデス・ベンツSLクラスのAMGバージョンであるSL65AMGをベースに、さらなる高性能化を図ったスペシャルモデル、SL65AMGブラックシリーズを発表した。
このモデルは、2006年にオープンしたAMGパフォーマンス・スタジオが2年を費やして開発。開発時には10台の開発車輌を使用し、ニュルブルクリンク北コースにおける1万5000kmを含めて世界中のサーキットで3万kmのテスト走行を行った。また、真夏のサーキットから冬の北極圏まであらゆる気象条件でテストを行い、世界中の走行環境に対応させたという。
パワーユニットは、最高出力670hp/5400r.p.m.、最大トルク102.0kg-m/2200~4200r.p.m.を発揮するAMG製6.0リッターV12ツインターボ・エンジンを搭載。このエンジンは、吸排気系の改良や通常モデルより12%大きいターボチャージャーの採用、ウエストゲートダクト最適化などにより、全回転域で標準モデルを上回る出力特性を実現した。1基ずつ1人のAMGの技術者が責任をもって組み上げるスペシャル・ユニットだ。
トランスミッションには5A/TのAMGスピードシフト・プラスを搭載。このトランスミッションは1速から直結状態になるロックアップ機構を備えるほか、“C“、“S”、“M1”に加え、M1と比較して変速スピードが25%速くなる“M2”の4つの変速モードを装備。また、シフトダウン時にエンジン回転数を自動的に合わせるダブルクラッチ機能も備えている。
DTM(ドイツ・ツーリングカー選手権)に参戦しているCクラスや、1997年にFIA-GT選手権に参戦したCLK-GTRを彷彿とさせる、強烈にアグレッシブなイメージを放つエクステリアは、大幅な軽量化も図っている。大開口ラジエターグリルを持つフロントバンパーやフロントスポイラー、大きな放熱スリットを備えたボンネットフード、通常より14cmワイドなフロントフェンダー、トランクリッド、リアバンパー、ディフューザー、120km/hで自動的に12cm伸びる可動式リアスポイラーなどにカーボンファイバー複合素材であるCFRPを採用。また、ルーフは電動開閉式のバリオルーフではなくロールバーを内蔵したカーボン製固定式ハードトップとされた。
この結果、SL65AMGブラックシリーズは通常モデルと比較して約250kgも軽い1870kgの車輌重量を実現。パワーウェイトレシオは2.79kg/hpを達成した。これにより、0~100km/h加速3.9秒、0~200km/h加速11.0秒、最高出力320km/h(速度リミッター作動)という、まさにスーパーカーと呼ぶに相応しい卓越した動力性能を実現している。
サスペンションには調整式コイルスプリングを採用。これにより個々のサーキットの特性に合わせてショックアブソーバーの減衰力や車高、アライメント、キャンバー各の調整を可能にした。また、キャンバーストラットとプッシュロッドを新設計。トレッドは標準モデルに対してフロントが97mm、リアは85mmワイド化されている。
ステアリングギア比は標準モデルより8%クイック化。リアアクスルには湿式多板クラッチ式LSDを採用した。また、ESPは“ESPオン”と“ESPスポーツ”、“ESPオフ”の3モードを備えたESPOを採用した。
タイヤサイズは、フロントが265/35R19、リアは325/30R20で、ホイールにはAMG製のツインスポーク鍛造アルミホイールを採用。ブレーキはフロントが390mm×36mm、リアは360mm×26mmのドリルド・ベンチレーテッドディスクを採用。キャリパーはフロントが6ポット、リアは4ポットとなっている。
インテリアは完全にブラックで統一したほか、CFRP製シェルにファイングレインナッパレザーの表皮を組み合わせたスポーツバケットシートや、通常のものより15mm小径かつフラットボトムのステアリング、専用メーターパネル、アルミパドルシフトなどを採用。また、ナッパレザーやアルカンターラ、カーボンなどをふんだんに使用し、レーシングカーを思わせる機能的なイメージを演出した。
なお、SL65AMGブラックシリーズは2008年11月にデリバリーが開始される予定。欧州以外の市場でも販売する模様だが、日本導入予定については不明だ。